僕は一輝。
今日は待ちに待った謙吾さんと会う日だ。
昨日の夜は何だか久々にワクワクして全く眠れなかったし、
謙吾さんに会えることが嬉しすぎて、早めに待ち合わせの場所に着いてしまった。

『ここが、バーヘルマ、、、
え、本当にここ?大丈夫かな?』
そして目の前にあるのは昭和の匂いも何となく漂ってきそうなバーの古びた扉。
初めて来た場所というだけで緊張してしまうのに、、、

『ほんとにこんな所に謙吾さんが来てるのかな??』
ピロリンッ

『謙吾さんからだ!!
なになに?電車が事故で遅延していて遅れちゃうのかー、、、
とりあえず大丈夫ですよっと返信♪んー、どうしようかなぁ。
きっとまだまだ時間がかかるだろう。ちょっと怖いし、離れたところでお茶しておこう、、、』
ガチャッ!!

ビクッ!!!

『あっらー!?オープンするの待っててくれたの?
嬉しーわー♪いらっしゃーい!!』

『え!え!? 僕は、、あ、待って、、』

『ささ、今からオープンよ!!ズべコベ言わずに入っちゃいなさーい!!』

『え、力強っ!!── って、あぁぁぁぁぁれぇぇぇぇ、、、、』
バー店内にて

『あらー、そうだったの?外で待ち合わせをしていたの?それは、ごめんなさいねー。
ワタシ、この店のマスターしてるのよー。』

『(あ、この人がマスターなんだ…)僕、一輝と言います。
でもちょうど入ろうか入らないか迷っていたとこだったので、、、』

『一輝君ね、よろしく!!ちょうど今はオープン直後だから他のお客さんはいないからゆっくりしていってー。
何が良いかしらー?。』

『ええっと、、』

『そんなドキドキしなくていいのよー?』

『いや、初めてのところって結構緊張してて…。
あ、マスターのお任せで、、、』

『お任せねー(笑)
でも一人で若い子が来るなんて、よくここが解ったわねー。』

『あの、謙吾さんってご存知ですか?』

『あー、謙吾の知り合いねー♪』
マスターが出してくれたお酒を少し口に含み、ちょっとホッとする。

『一輝君は緊張しいなのねー。』

『そうなんです、、、小さいころから緊張しやすくて、、、』

『そういう時ってどういう状態か知ってるー?』

『え?』

『緊張しているときってだいたい自分ばっかりに意識が向いてるのよー。
自分に意識が向けば向くほど、どんどん緊張してしまうの。
でも、その意識の矢印が自分では無くて、相手に向けていくことで緊張もしなくなるの。
覚えておくといいわよー♪』

『は、はい。
確かに緊張しているときって自分のことばかり考えていて、相手のこと全然考えていない気がします。』

『ある意味、気遣いの出来ていない人間なのよ、気をつけなさいね。
あと、良いこと言ったから500円頂戴ねー(笑)』

『えー、それは無いですよーっ(笑)』

『緊張もほぐれてきたようね。』
お酒の力もあるのか、それともマスターの不思議と面白い話術のせいなのか、いつの間にかガチガチだった心と身体の緊張がほぐれてきた。
これもマスターの言う気遣いということなのだろうか?
少しづつ、自然とマスターに僕のことを打ち明けていった。

『そういえば、謙吾とはどういう仲なのー?』

『いや、まだ今日で会うの2回目なんで、なんとも……』

『一輝君は昔の謙吾にちょっと似てるわねー。
でも、まだ一輝君の方がましかもね。』

『前回、謙吾さんに会った時に同じことを言われた気がするんですが…』

『そうね、謙吾は違ったけど、なんかオドオドしている感じがするから。
でも、そういうところが可愛いのかもねー。若いって特権だわー(笑)』

『はぁ…』

『あと今まで自分で何かを決めてきたことって少なそう。』

『マスターはズバズバ痛いとこついてきますね……』

『そりゃ、長年この仕事してたら、嫌でも見えてくるわー。
あと、あそこのサイズも百発百中よ!!当ててあげる(笑)』

『いやいやいや、遠慮しておきます(赤面)』

『冗談よー、こんなことで顔が赤くなるなんて、ますます可愛いー(笑)』

『もー、やめてくださいよー。』

『あ、他のお客さんが来たわ、ちょっと待っててねー。』
マスターはマスターで人生がとても楽しそうだ。
謙吾さんは謙吾さんで、充実した人生を送っているように見える。
それに比べて僕はどうなんだろう……全然、人生がつまらない…。

『はぁ……。』

『あらー!何溜息ついてんのー?』

『なんかみんな輝いているなーと思って。それに比べたら僕は何をしているんだろうって。』

『このご時世、色々と若い子は若い子で悩みが多くて大変ね。』

『周りの子は恵まれてるんだなーって。僕なんて何もないし…』

『だからこそ、今から色々できるんじゃないー!!』

『え…?』

『まっさらなキャンバスだから、絵が描けるでしょ。
それと同じで、今から一輝君の絵を完成させていけばいいのよー。』

『でも周りと比べたら僕なんて全然……』

『周りと比べたがるのも解るわー。アソコの大きさなんて特にね(笑)』

『そこはお察しの通り……』

『他と比べて劣等感を抱いても何も変わらないの。でもね、劣等感の中でも良い劣等感があるのよ。』

『良い劣等感…?それって何ですか?』

『他人と比べるのではなく、一輝君自身がなりたい将来と今を比較してみるの。
どんな絵を描きたいのか完成形を最初に決めて、それに向かって今の段階がどの状態なのか比べてみたら、
そうすると今足りないものが見えてくるはずでしょ?』

『なりたい自分……』

『あ、でもアレの大きさはもう諦めなさいね(笑)』
そんなことを最後に考えたのはいつだっただろう。
小さい頃にはたくさんのなりたい憧れの自分があったはずなのに。
大人になるにつれて、だんだんと周りのしがらみや様々な制限、固定概念から自分を押し殺してしまったのだろうか。
あの時より出来ることは多くなったはずなのにな……。

(なりたい自分になるにはどうしたらいいんだろう…?)

『あら、いらっしゃーい!!』

『いやー、遅れてごめんよー。』

『謙吾さん!!』

『もー、待ちましたよー』

『あはは、ごめんなー。』
まっさらな僕の人生のキャンバスにこれからどんな絵を描いていくんだろう。
謙吾さんの声に、僕の胸の高鳴りが止まらなかった───。
レベル
『将来のあなたってどんな感じ?』
はーい☆あなたの心のオアシス、マスターよ!
ワタシの活躍っぷりはどうだったかしら?
さて今回のお話のポイントは
「なりたい将来の自分を考える」
これね、一つコツがあって
出来るだけワクワクしたことをしながら夢を叶えているあなたを想像してほしいの。
苦しみながらではなくて、ワクワクってのがポイント☆
あと、出来るだけ自由にね!
それで、そんな風に夢を叶えているあなたが
今もやもやしているあなたに対して
どういう言葉をかけてくれると思う?
他でもない、未来のあなたがくれたメッセージ、大切にしてみない?