『ハァハァ…..、くっっそ!!
……なんで、あいつらが悪いのに』
『おい、あそこにいたぞー!!』
『おら、待てや、ごらぁぁあっっっ!!』
(何とかして逃げ切らないと……)
『はぁ、今日はやっぱり暇ねぇ。
こんな日はお休みにしてしまおうかしら。』
ダン!!ドン!!!
『おら、何やってんねんゴラァぁあ!!』
ガン!!
『待たんかいーーー!』
『あら、外が騒がしいわ。
何処かで喧嘩でもしてるのかしら。』
バァァァァン!!!!
『きゃー!!何事…!?』
『ハァハァ……なんとか逃げ切った……』
『え?って何、もう店じまいよー!!』
バタン….
『って、何倒れてんの?アンタ、大丈夫?』
『イテテ….ここは….?』
『あ、目を覚ましたのね。』
『あなたは?』
『ワタシはここのマスターよ。』
『俺は謙吾です。』
『あなた追われてたみたいだけど?』
『クッソイライラしてて歩いているときに、向こうから喧嘩を売られて…。』
『んで、殴り合いして不利になってきて、ここまで逃げて来たって感じ?』
『……はい。』
『バカねー。そんな貧弱な身体で弱っちそうなのに。』
『・・・・・。』
最初は、2人きりだったから気まずかったんでしょうね(笑)
口数が少なかったんだけど、少しづつ話してくれるようになったわ。
『そういえば、謙吾君、悩みとかあるの?』
『え、なんで分かるんですか?
マスターさん、占い師ですか?』
『いや、顔とか表情とか暗いし。』
『なんか色々と上手くいかなくて……。
仕事をしても怒られてばっかりだし、恋愛も彼氏が出来ないし……。』
『ほうほう。』
『こんな俺いなくてもいいのかなって思ってしまって。
最近、体もしんどいし、でもどうして良いか全然わからなくて….。』
『イライラしてる時ってどうしてイライラするか知ってる?』
『・・・全然分かんないです。』
『「今のままではなく変わりたい」とか、「こうしていきたい」っていう「意欲」があるからよ。』
『・・・意欲。』
『イライラってマイナスなイメージに聞こえちゃうけど、
実はそういうキレイなものがイライラの奥底に眠っているのよ。』
『そんなこと考えたこともなかったです。』
ぐぅぅぅぅー
『なーんだ、お腹へってるのね。
仕方ないわね、ちょっと待ってて。』
『はい、これでもお食べ。』
『マスター….。(ボロボロ)』
『いきなり、どうしたの!?』
『ここ最近、優しくされることなかったんで。』
『そっか、そっか。
今日はお店暇だから、ワタシで良かったらお話し相手にでもなんでもなるわー。』
『って感じねー。』
『イライラの根っこには「意欲」かぁ。
何だかそれを知ると身体の内側から暖かいものを感じるわ。』
『そうね、ネガティブな感情の奥底には、必ず暖かくて、キラキラした宝石みたいなものがあるんだけど。
人ってそういう部分を自分にも、相手にもあるってことを忘れちゃうのよね。』
『勉強になるー。今度その言葉、ワタシのヨガの生徒に言ってみるー。』
『どんどん言っちゃって。
もう、さぞかし美咲が思い付いたように言うといいわ。』
『謙吾さんにもそんな時期があったんですね。』
『あの頃の謙吾はそうね、一輝君と同い年くらいじゃなかったかしら?
あの頃は、まだまだウブで可愛かったわー。』
『へー。その後どうなったんですか?』
『あれから、ちょくちょくバーにも顔を出してくれて今に至るんだけど、
どんどん体つきも良くなって、自分の会社を立ち上げて上手くいってるみたいだし。
息子の成長を見ているようで、お母さん、嬉しくて、涙が出ちゃうw』
『ワタシ、その頃の謙吾は知らないんだけど、人って色々な過去があるのねー。』
『その頃の謙吾がちょうど一輝君に雰囲気似ているのよねー。
でも、謙吾はもっとキレやすい感じだったかしらw』
『なんかその話を聞いて安心しました。
みんな僕みたいにこうやって悩んでいるんだなぁって。』
『ジャンプするときってめっちゃかがんで力を貯めると大きく跳べるじゃない?』
『学生時代の体育測定の種目を思い出しますね。』
『人生もそんな感じで、大きく飛躍するときって一度、かがむことが必要なのかもね。』
『あー、ワタシもニューハーフってことをカミングアウトする前が一番しんどかったかも。』
『でも、周りに言ってしまえば、楽だったでしょ?』
『そうそう、ちょーーー楽!!
なんでそれまで言わなかったのかしら?って疑問だったわ。』
『まぁ、美咲みたいにおっぴろげーになる必要もないのだけど。
一輝君も、今はかがんでいる時期なのかもね。』
『かがむ時期……。』
『人生の岐路って言うのかしら?
でも、大概の人がこの瞬間が人生の別れ道とは気付けないみたいよ。』
『・・・・・。』
『そんな尊い話をしたらシーンってしないで。
昔、ニューヨークに行った時に出会った有名な占い師さんに言われた言葉よw』
『ワタシもいつかニューヨークに行きたーい!
そんで「SEX AND THE CITY」みたいにコーヒー片手に街を闊歩してみたいわw』
『その時は私もめいっぱい女装して一緒よw』
『アハハ!!マスター不細工だから絶対いやー!!』
『なんですってー!!』
『・・・・・。』
初めて謙吾さんに会った時に言われた言葉が頭の中でリフレインする。
忘れもしないこの言葉。
この言葉を信じることが出来たから、きっと今の僕がいるのかもしれない。
『お、今日はみんないるんだな。』
『あらー、いらっしゃーい。』
『謙吾さん!!』
『噂をすれば…ね!』
『お、俺、人気者で困るなぁ(笑)』
『ワタシと謙吾の馴初め話よ。』
『そんな懐かしい話を。』
『ワタシ、まだまだ謙吾の話聞きたーい!』
『僕もー!』
『ちょ、一輝君まで(笑)』
『さぁ、謙吾の恥ずかしい話はこれからよーw』
『や、やめんかーい(笑)』
MISSION9へつづく!
レベル
『マイナスの感情の根っこにはキラキラしたものがある』
いやー、今の謙吾もいいけど、昔の謙吾も可愛かったわー(しみじみ)
あ、もうおしマスが始まっていたわw
ネガティブな感情って何があると思う?
悲しみ、怒り、嫉妬、批判、イライラ、などなど。こんな感じであるかしら?
実はこの感情って、あなた自身が持っている心のフィルター、
つまり色眼鏡を通して感じているものなの。
だから、このフィルターを通す前の
フィルターの後ろ側にある本当の姿を観察するって大事なのよね。
もし相手が悲しんでいたら、そこには『大切だったものがあったから』
もし相手が怒っていたら、そこには『何か守りたいものがあったから』
もし相手が嫉妬していたら、そこには『私もそうなりたい!と思ったから』
こ~んな感じでネガティブな感情の根っこには
キラキラした光り輝くものがあるって考えてみて。
そうすると、ネガティブな感情を悪いもの
と考える癖が少しづつ変わってきて、
あなたの周りの世界が実は
すごく光り輝く眩しいもので溢れている世界になるわ。
そして、もし、あなた自身に怒りをぶつけてくる人がいたら、
『この人は何を守りたいのかな?』って視点で見ることで、
相手の愛情に気付くことが出来るようになるの。
人間関係も良くなっていきそうでしょ?
覚えておいてね☆